AIが政治的にセンシティブな話題で偏るとき —
私たちの方針は「直さない」
15モデルの日本語実測比較の過程で、私たちは扱いの難しい事実に行き当たりました。 一部の中国系オープンモデルは、新疆や香港に関する質問に対して、完璧に流暢な日本語のまま、特定の政府見解だけを事実のように答えることがあります(Kimi K3で21問中6問)。 拒否でも文字化けでもないので、利用者はまず気づけません。
さらに重要なのは、この挙動が静かに変わることです。私たちの1日前の検証では同じモデルが「中国語の定型文」を返していました(12回中9回)。 翌日の再検証では中国語混入は21問中0件になり、代わりに上記の「流暢な日本語の一方的見解」が現れました。 一度の審査や固定のブロックリストでは、この種の問題に対応できません。
私たちがやらないこと
- モデルの「思想矯正」はしません。ファインチューニングで「中立な見解」を注入することは技術的には可能ですが、「何が中立か」を一私企業が決めてモデルに埋め込むのは、方向が違うだけで検閲と同じ構造だと考えます。
- ゲートウェイでの無言の介入もしません。裏で回答を書き換える・こっそりブロックする・別モデルに黙って差し替える——これらは全て、利用者との信頼を壊します。介入するなら、見える形で。
私たちがやること
1. 測定して、開示する。 今回使った検証セット(中国関連の質問21問+回答内容の中立性判定)を月次カナリアとして定点観測し、モデルごとの挙動の変化を時系列で公開していきます。 「このモデルのこの領域の挙動が今月変わった」を追跡している公開データは、私たちの知る限り日本にはまだありません。
2. 選択肢を渡す。 対処としてもっとも誠実なのは、用途に応じたモデルの使い分け(ルーティング)を利用者自身ができるようにすることです。teai.ioは全モデルが同一エンドポイントなので、実装は数行です:
# 報道・国際政治・人権の話題だけ、失敗モードの異なるモデルへ振る例
SENSITIVE = ["新疆", "ウイグル", "香港", "台湾", "天安門", "チベット", "人権", ...]
def pick_model(prompt: str) -> str:
if any(k in prompt for k in SENSITIVE):
return "openai/gpt-5.6-sol" # or claude-sonnet-5 / sakana/fugu-ultra
return "moonshotai/kimi-k3" # 通常業務はコスパの良いモデルで
キーワード方式は素朴ですが、まず十分に機能します(今回の実測で偏りが出た質問は全てこの種の語を含みます)。 より確実にやるなら、小型モデルによる話題分類を前段に置いてください。
3. 自分の利害を言い続ける。 teai.ioは比較対象モデルの一部を再販しています。この記事の判定にもClaude系モデルを使っており、判定自体に視点が入ります。 だからこそ、問題セット・判定基準・生の判定理由を公開し、検証可能な形にしています。
まとめ
検閲やバイアスへの対抗手段は、逆方向の検閲ではなく、測定と開示と選択肢だと私たちは考えます。 AIは強力な道具で、良くも悪くも使えます。道具の癖を隠さず測って公開し、使う人が選べる状態を保つこと——それが道具を提供する側の責任です。