同じモデル(teai/max)を使った2つの実験。片方は2018年から8年間誰も証明できなかった数学の予想を、独立検算済みで正しく証明した。もう片方は実在しない医学論文を作り、危険な誤情報を主張した。何が違ったのか。この1週間でteai.io/shitateが行った4つの実験を横断して見えたのは、たった1つの設計上の分かれ道だった。
OEIS(整数列データベース)には、投稿者が経験的に見つけたが証明していない「Conjecture:」コメントが大量にある。teai/maxに、そのうち専門家が検証できる規模の45件を、数値検証→証明→敵対的査読→改訂(最大3周)というパイプラインで挑ませた実験があった。
ここで重要なのは、パイプラインが2回自分でバグを発見し、自分で直したことだ。1回は「証明放棄」を「証明成功」と誤判定する重大なバグだった。査読プロンプトを修正し、既に処理済みの17件を再監査までしている。
同じ週、別の実験でteai/maxに7つの難病向けの既存薬リパーパシング候補を提案させ、引用文献を検証した。ALS(筋萎縮性側索硬化症)向けにメトホルミンを提案した際、teai/maxは実在しない論文を引用し「効果がある」と主張した。しかし実在する先行研究は、メトホルミンがALSモデルでむしろ症状を悪化させたと報告している。効果の方向を丸ごと逆転させる誤りだった。
2つの実験を並べると、決定的な違いが1つある。
| 数学(成功) | 創薬(失敗) | |
|---|---|---|
| 検証方法 | 敵対的査読(別呼び出しが論理の飛躍を専用に探す)+ 数値での独立検算 | 引用文献の実在確認(後付けで人間/別AIがWebSearch) |
| 誤りの発見者 | パイプライン自身(査読プロンプトのバグも自己発見) | 実験の作成者が事後に気づいた |
| 正誤の判定手段 | 計算で機械的に確定できる | 文献レビューという人間の目に依存 |
数学の実験は「生成→敵対的に疑う→直す」を実験の設計そのものに最初から組み込んでいた。創薬の実験は「生成→(後から)人間が疑う」という順番で、疑うタイミングが遅かった。しかもAI自身が提案した「改善策」(PMID数字化)は、疑うことをむしろ難しくする方向に効いてしまった。
この「疑ってかかる」姿勢は、コードや医学論文だけの話ではない。同じ週、teai.ioは自社の価格表(129モデル)を、上流(OpenRouter)の公式カタログ413件と機械照合した。
「全モデル、上流原価+5%だけ」と自分たちで言っていた前提を、自分たちで機械的に疑いにいった結果だ。これも「言った以上、検証され続ける状態にしておく」という同じ思想の実践になっている。